食のトレンド最新動向 2015年12月動向 後編 | 「クリスマス」の主人公は誰??

発明品だらけの「メリークリスマス」

“メリークリスマス!”今日はまさにクリスマスイブ、皆さんはどのようにお過ごしになるのだろうか。

前号で述べたように、11月なのにもうすでに「クリスマス」が<気になる>スイッチの第1位になっていた。当然のことながら、12月には断然トップになっているはずである。

クリスマスの食卓去年の12月は「クリスマス」「クリスマスケーキ」が圧倒的な<気になる>ワンツーフィニッシュだった。因みに直近の12月15日までの12月前半月分をみてみると、案の定すでに「クリスマス」「クリスマスケーキ」がワンツーを独占している。

このことはもはや食のトレンドを越えて生活価値観として、11、12月の“不易”を形成していることは間違いないことだ。だからこそ、そのことが持つ本質的な意味を理解しておくことが大切である。

前回も説明したように「クリスマス」というものが表象しているものは、ほとんどが発明品の「接ぎ木」なのだ。西欧の風俗でいえば、「冬至の祭り」の上に、多くの発明品が「接ぎ木」されており、初源の価値は「冬至の祭り」でしかないのだ。

子供たちこそが主人公!

「冬至の祭り」の主人公は子供である。夜の暗闇が長くなり、霊や死者がこの世界に満ち満ちてくる時、それを具体的に代理する象徴が子供たちであった。村々の家々をまわり、大人たちが用意しておいた食べ物やお菓子などを強要していくことがこの期間には許されていた。

大人たちは食べ物やお菓子を用意し、子供たちにプレゼントとして渡すことで、霊や死者を慰めることを通して太陽の復活と翌年の豊作を期待したのである。

シュトーレンそれらの子供たちへ贈与される食べ物やお菓子が原形となって、ライスプディングやシュトーレン、ブッシュドノエルなどといった現代に伝承されたお菓子や食べ物が生まれ伝えられてきたのだ。「クリスマスケーキ」という言い方をされるものも、本質的にいえば子供たちへのプレゼントということが本質的な価値なのである。

またその上に「接ぎ木」された「サンタクロース」という発明品も、基本的には子供たちへのプレゼントを行なうということに尽きるのだ。

<冬至の祭り>の食べ物群

昨年の12月の<気になる>ランキングをみていると、「クリスマスケーキ」というワード以外に「チーズケーキ」「スポンジケーキ」「ロールケーキ」「アップルパイ」というケーキ系に加えて、「シュトーレン」「ブッシュドノエル」が確かに登場していた。

また、ローストビーフ、ローストチキン、ビーフシチューなども同様に<気になる>スイッチを押すことになるアイテムである。

ローストビーフつまり、これらは<冬至の祭り>以来、子供たちにプレゼント、贈与されることになった食べ物、お菓子が原形になったものなのだ。だから、日本の風土に存在する冬至のかぼちゃ、ゆず、白菜などが関与することは中々できないものだということができる。

今年の12月15日までの半月分の傾向も全く同様のことになっている。「ブッシュドノエル」だけがまだ<気になる>スイッチを押していない。これはたまたま去年「ブッシュドノエル」がブームだっただけのことなのか、今年もこれから上昇してくるのかはわからない。ただ、「ブッシュドノエル」は根の深い原形を持っていることだけは確かなのだ。

様々な曲折や「接ぎ木」を経ながらも、いわゆる「クリスマス」というものが、子供たちを主人公にした催事であることは変わらずに続いてきたといえるし、今後共この価値は維持されていくだろう。もちろんその上に、新しい発明品が生みだされていくことは確かではあるが。

「恋愛ゲーム」のクリスマス以降は?

ところが、この“不易”の価値の上に、また新しい発明品が<接ぎ木>されたのである。これは日本の特有現象なのだろうか。子供たちが主人公であった「クリスマス」というものが、カップルたちの通過儀礼になったのである。つまり、子供が主人公だというところから、「クリスマス」というものに「恋愛ゲーム」という新しいコードが生みだされたということになる。

1990年前後にJR東海が行なったクリスマス・エキスプレスというキャンペーンがその始まりのイメージかも知れない。クリスマス、カップル、恋愛というものがコードを獲得したのである。日本では「クリスマス」というものは「恋愛ゲーム」の舞台ということの方が市民権を得た風情もあった。これは明らかに全くの発明品以外の何物でもない。

46f3dec77d22fb3a26cac9e0e5568f9a_lだが、このブームへの反作用なのか、最近では「クリぼっち」ということの方が時代の実態を反映しているようなところがある。「ひとりぼっち」で過ごす「クリスマス」ということで、「恋愛ゲーム」からの脱コード化の進化のようでもある。これはこれで新しい発明品を生みだしていくことになるだろう。

さて今年の「クリスマス」はもう終わり、来年の「クリスマス」に向けて、どんな発明品を皆さんは考えるのだろうか。それはどんな本質的な価値と根拠を持つものなのだろうか。

年内の本サイトからの情報発信はこれで最後となります。来年もご期待ください。

執筆:辻中 俊樹
(マーケティングプロデューサー)

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