【食のトレンドレポート Vol.13】薄紅色に霞んだお弁当に〈彩り〉〈さし色〉をみつけた!!

【目次】薄紅色に霞んだお弁当に〈彩り〉〈さし色〉をみつけた!!

  • 送られてきたお弁当の写真から
  • 薄紅色が霞んだように…。
  • データに現れない〈彩り〉
  • 高野豆腐がおいしそう!

執筆:辻中 俊樹
(マーケティングプロデューサー)


食のトレンドレポートVol.13が配信されました。食欲を沸き立たせるために、<彩り><さし色>というトリガーがあることは本レポートのモチーフとして重ねて説明してきました。商品開発や売場などの現場では、それらは一体どのような見え方として、またどのような消費者行動として表出してくるのでしょうか。執筆者が食に関する数々のプロジェクトで実施してきた生活日記調査。実際に行われた生活日記調査の中から、「旬」をビジュアライズするための要素について、あるシニアの昼食の「お弁当」をモチーフに解説します。


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食のトレンドレポートvol.13食のトレンドレポートvol.13
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食のトレンド最新動向 2015年12月動向 前編 | 11月なのに「クリスマス」が<気になる>!?

白菜の本番シーズン到来!

かぶ、大根

かぶ、大根という晩秋に旬を迎える野菜素材が、11月の<気になる>スイッチを押す。

今年11月の<気になる>スイッチを押したベスト3は、クリスマス、かぶ、白菜である。ちなみに昨年のベスト3は白菜、クリスマス、大根であった。

昨年は大根が登場し、今年はかぶが登場したのがちょっとした変化かもしれないが、大根は今年はベスト3ははずれたが、やはり7位にはいる。また、かぶは今年は2位に上がったともいえるが、昨年もやはり10位には登場していた。その意味でいえば、多少の上下はあったものの、かぶ、大根という晩秋に旬を迎える野菜素材が、11月の<気になる>スイッチを押すということは“不易”の傾向といえる。

白菜については、去年は堂々の1位だったのが3位になったとはいえ、10月よりは上昇している。いよいよ白菜が主力の季節の到来だということになる。これは恐らく12月まで続いていく流れであることは容易に予想できるといえる。

二十四節気でいえば、秋分を過ぎ寒露あたりの秋の気配がいよいよ本番になってくるころに始まり、大寒を過ぎ寒が明けて立春を迎えるまでの間が、まさに白菜の季節なのである。八から九節気をまたがって継続されていくという、秋から春の入口までの野菜の王者ということができる。

前回も述べたように、この王者を単に鍋の素材としてだけにするのは問題なのである。もっともっと多様な食べ方、食シーンがあっていいはずである。

えっ!?もう「クリスマス」なの?

さて、去年の11月も2位だったので当然の予想ではあったが、今年はついにクリスマスが11月にして1位に上がってしまった。もちろん12月には1位になることは自明のこととして、すでに11月にクリスマスが<気になる>スイッチを圧倒的に押すことになった。

さすがに11月の前半では少ないものの、11月の半ばを過ぎたあたりから急上昇していく。それにしても1ヶ月以上先のことが、これほどに<気になる>スイッチを押すことになるのは異常ともいえる。

クリスマスの食卓

子供たちとママたちの仲間のクリスマスパーティーは、12月の前半あたりから前倒しされて行なわれるのも事実である。

これは幼児などを抱える<飼育員さん>たちの生活パターンが影響していることも一因である。12月24日のクリスマスイブが本番だとしても、子供たちとママたちの仲間のクリスマスパーティーは、12月の前半あたりから前倒しされて行なわれるのも事実である。そんな影響もあろうとはいえ、クリスマスは本当に<気になる>催事なのだ。

これには一つの背景がある。日本人の生活に定着した大きな催事ではあるのだが、実は季節や旬、ましてや二十四節気という自然の運行のリズムとは全くといっていい程シンクロしていないものなのである。いわゆる典型的な接ぎ木状態になって、何故か定着してきたものだといえる。

別の言い方をすれば、日本人の持つ自然のリズムとは全く関与することのない、とってつけた様なものだということが重要なのである。だから、ある意味でなんの根拠もない催事なので「本当は何をすればいいの?」といった困り事も多く、そのため<気になる>スイッチを押し続け、加えて<調べる>スイッチをどんどん押すことになるのだ。

「冬至の祭り」への接ぎ木

冬至の柚子湯

冬至の時期に<気になる>はずのゆず、かぼちゃはクリスマスメニューには全く関与していない。

二十四節気でいえばクリスマスはちょうど冬至の時期である。本来ならば冬至の時期に<気になる>はずのゆず、かぼちゃ、ましてや冬至あたりにピークを迎えていいばずの白菜というものとは、クリスマス、あるいはクリスマスメニューは全く関与していない。

いいかえれば、何千年にわたる日本の持つ習慣、自然の運行のリズムには無関係に接ぎ木された分だけ、クリスマスは、食にとっては潜在的に大いなる困り事なのである。

本来のクリスマスは、冬至の祭りを起源としている。冬至という最も昼間の時間が短くなり、太陽の力が最も弱まるこの時期は、生きる者や自然そのものの生命力が一番弱まり、死者や霊の力がこの世に満ちる時なのである。だから、この死者や霊に贈り物をして慰め、太陽の力の復活を祈るということになる。

冬至の頃のヨーロッパは、夜の暗闇の時間が圧倒的に長く、昼間も暗雲がたれこめ冷たい風が吹きすさび、そんな気分にさせられるのも実感が湧く。だから、冬至の祭りを行ない太陽の復活を待つのである。ローマ時代に行なわれていたサトゥルヌス祭などもこの一つである。

この土着の祭りや異教徒の祭りの上に、キリスト教会が接ぎ木して乗せたのが「クリスマス」であった。「クリストゥス + マス」、つまりキリストへの礼拝という意味であり、本来夏に誕生したであろうイエスの降誕をここに結び付けただけに過ぎない。とはいえ、冬至の祭りという歴史的な蓄積の上に、イエス降誕をうまく接ぎ木して「クリスマス」は成り立っているといえる。その意味では西欧人にとっては根拠のあるものなのだ。

発明品としての「サンタクロース」

ましてやサンタクロースなる存在まで考えると、さらに接ぎ木が重ねられていくことになる。七面鳥を食べるということ一つとっても、そんなに歴史的な蓄積のあることでもないのだ。

つまり、いろいろなものが接ぎ木された発明品の集まりが「クリスマス」であり、「サンタクロース」なのである。そして、冬至の祭りという最も深い根拠と、日本の私たちのクリスマスとは結びつかないのである。

私たちがなじみにしている白ひげと赤いマントのサンタクロースなるものは、第2次世界大戦後にコカコーラが発明したものがヨーロッパ大陸に進出していったのである(アメリカ大陸では1930年代)。ケンタッキー・フライド・チキンの骨付きチキンやパーティーセットなども、最近の発明品だ。カーネルおじさんはどことなく「サンタクロース」っぽいからだろうか。

そうみれば、クリスマスはまだまだ発明されるものが、多く残されているフィールドともいえるのだ。

白い髭で描かれた、かつてのサンタクロース。この他にもサンタクロースは様々な姿でイメージされていた。

白い髭で描かれた、かつてのサンタクロース。この他にもサンタクロースは様々な姿でイメージされていた。

古いクリスマスカードに描かれたペール・ノエル(サンタクロース)

古いクリスマスカードに描かれたペール・ノエル(サンタクロース)

コカ・コーラの印刷広告シリーズのサンタクロース

1931年にコカ・コーラの印刷広告シリーズとして登場したキャラクターがサンタクロースとして定着することとなった。

上記3点の図版/出典:『クリスマスの秘密』クロード・レヴィ=ストロース


執筆:辻中 俊樹(マーケティングプロデューサー)

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食のトレンド最新動向 2015年11月動向 後編 | 「白菜」パワーをしっかり把握する!

「白菜」「里芋」がスイッチを押す!

里芋の芋汁

10月に強く<気になる>スイッチを押しているのが「白菜」と「里芋」である。

2015年10月の<気になる>スイッチの動向の後編である。前回述べたように、この時期の<気になる>スイッチを強く押すテーマはまずは「栗」、「さつまいも」であった。

その季節ならではの、いわゆる旬の素材が圧倒的に<気になる>のだ。これらの素材は群を抜いて上位にランキングされてくる。「栗」「栗ごはん」は9月では1、2位だったし、10月では「さつまいも」「スイートポテト」は3、4位というように、万人が(限られたセグメントの中の)意識することになるものである。

ただし、一気にピークは到来するけれども、潮が引いていくのも極めて早い。10月に一気に波が来るが11月になればもう<気になる>スイッチはほとんど押されなくなるのだ。「栗」よりも「さつまいも」は、やや息が長いようで10月をトップシーズンにして、9、10、11月の3ヶ月くらいは持ちこたえている。

「栗」は別として、実際は「さつまいも」は通年で食べられている訳だし、12月以降は食卓から消え去る訳ではないのだ。ここのポイントをよくみておく必要がある。

さて、「栗」、「さつまいも」と並んで10月に強く<気になる>スイッチを押しているのが「白菜」と「里芋」である。10月では「白菜」が5位、「里芋」が7位ということになっている。すでに9月には2つとも20位台に顔を出しており、いよいよ<気になる>スイッチを強く押し始めたということだ。

ロングパワーを持つ「白菜」

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「白菜」は<気になる>スイッチを押す頻度が多い上に、それが息長く続くロングパワータイプである。

秋の始まりと共にこの素材たちが登場し、秋の深まりに伴なってさらに<気になる>頻度が増え、冬の到来、深まりが強くなればなるほど意識されていくことになる。恐らく11月のランキングでは「白菜」がトップになるだろうと予測している。因みに去年の11月は「白菜」が堂々の1位だった。この「白菜」の特徴は、9月に登場し1月くらいまでの半年近い間、ずっと<気になる>スイッチを息長く押し続けるのである。

去年の動向を振り返ってみると10、11、12、1月の4ヶ月間にわたって、ずっとランキングのベスト10の上位を維持し続けていた。<気になる>スイッチを押す頻度も圧倒的に多い上に、それが息長く続く、ロングパワータイプなのである。トレンドレポート本編でも述べてはいるが、12月というシーズンはとにかく他の11ヶ月とは全く異なった旬、催事テーマが<気になる>ことになる。クリスマス関連に勝てるものはまずない。そんな異常な12月ですら、去年でみれば「白菜」は4位をキープしていたし、続いてお正月などで異常を起こしやすい1月でも6位にランキングされていた。

こんな特徴を持った野菜素材は他には全くないといっていいのだ。因みに10月では大きくランキングを上げた「里芋」が、11月にはまだそれなりのポジションをキープするが、それ以降は圏外に姿を消すことになる。今年の11月もたぶんそうなっているのではないだろうか。

その意味では「栗」「さつまいも」と似た傾向である。ただ、12、1月に「里芋」がまったく食べられなくなってしまったということにはならない。「白菜」という素材は、旬の意識が極めて強い上に、その息が長いということに着目しておくべきなのである。

「白菜」を「鍋」素材から開放できるか?!

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「白菜」といえば、最も相性のいいメニューは「鍋」ということになるが、本当にそうなのだろうか。

加えて、毎年この傾向が再来し続いているということでいえば“不易”なのである。単なる一過性のブームでもなく、旬、季節の到来の影響を強く受けて<気になる>スイッチを強く押す上、それがロングライフであること。こんな「白菜」は、ある意味大きなチャンスを生みだしているのだ。

まずは「白菜」といえば、最も相性のいいメニューは「鍋」ということになるが、本当にそうなのだろうか。もちろん、<気になる>スイッチの動向をみていると、10、11月あたりで「鍋」というテーマもまた、<気になる>スイッチを押していることがわかる。ただし、群を抜いて上位に上がってくる訳ではなく、12、1月になるとあえなくランキング外に姿を消してしまう。

私たちの視点でみれば、「鍋」はもっと通年化して食卓に登場しているのが実態である。もちろん、秋が深まってくることでより「鍋」を意識し、登場頻度も上がってくることにはなる。ただ、「鍋」というテーマ自身が<気になる>のは11月一杯ということに注意しておかなくてはならない。

私たちの感じ方でいえば、「白菜」を冬が近づいた季節ならではの、「鍋」の基本素材に閉じこめておくことは、生活者の食の実感、あるいは困り事に全くあっていないということになる。むしろ、「白菜」を「鍋」からもっと開放することこそを生活者は望んでいるといえよう。

古来ならば、旬の「白菜」は漬け物にされて保存されていったのだろうが、現代の都会ではそれは無理な相談である。トレンドレポート本編でも述べることになるが、「白菜」をうまく「段取り」をし「一工夫」する知恵こそが望まれている。

執筆:辻中 俊樹(マーケティングプロデューサー)

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