連休には「実家ごはん」
前回、前々回は単身のおばあちゃんの食卓をのぞきこんでみた訳だが、次は同じく単身ではあるが24歳の男性の休日をのぞいてみることにする。これは今年、2018年の9月22.23,24日の土、日、月である。秋分の日ということで三連休だった。いわゆる、お休みの日の単身男性の生活スタイルになる。秋分の日、つまり「お彼岸」という時に当たり、20代の単身男性にもそんな雰囲気が多少はあるともいえる。たとえばお墓参りにいったというような場面はないが、24日は丸一日実家へ帰っていた。「地元へ帰る」という言葉、約2時間程かけて日帰り帰省している。「家族と会話できて、気分転換でき、良かった」ということで、お昼は家族と一緒に外食で寿司等を食べ、夜は実家で「チキンカツ、ハンバーグ」など家族や自分の好きなものを食べた。
これはいわゆる私たちのいい方でいえば「実家ごはん」というもので、連休やあるいは年末年始、お正月などでは多発するシーンだといえる。いわゆる”集い”のシーンが生まれでて、みんなでごちそうを食べるということになる。この場面では外食という選択ももちろんだが、実家の食卓でみんなで食べるということに価値がおかれている。恐らく実家側はシニア世帯になるが、時折こんな”集い”が出現することになる。この「実家ごはん」というのは、一つの重要なキーワードであり食にとってのインサイトなのである。
皮から包む手作りギョウザ
三連休の初日である22日の土曜日は、お出かけにともなって昼は外食で焼きそば、夜は友人と焼肉店で食事となり、食機会のほとんどが外食となっている。これも独身20代男性の典型的なパターンといっていい。満足で充実した一日という感想と共に「料理はせず外食だったので出費がかさんだ」ということにはなってしまう。ただ単身男性の休日の食のあり方のパターンであることは間違いない。朝は「ヨーグルト、食パン、牛乳」と、平日のルーティンの朝食が繰り返されており、簡略な「内食」ということになる。
ところが、三連休の真ん中の23日の日曜日の夜は手作りギョウザである。メニューとしては「ギョウザ、ごはん、キャベツ」といたってシンプルではあるが、このギョウザは皮を使って作った完全な手作りである。いわゆる手間をかけた完全な「内食」ということになる。冷凍ギョウザでも、「中食」としてのテイクアウトのギョウザでもなく、完全な手作りというところがポイントだ。実はギョウザを手間をかけて手作りをするということは、やはり1つの大切な食のインサイトなのである。「手作りで美味しい料理ができたので、良かった」という感想と共に「レシピを見ながら、時間をかけて作成。味はまあまあだったが、満足のいく出来だった。」ということである。
休日の夜に手作りで完全な「内食」をするということは、単身の20代男性にとってどんな価値を持っているのだろうか。義務としての家庭内食ということでは全くなく、私たちの”気づき”でいえば、この手作りの「内食」は一種の楽しみであり、レジャーだということになる。レジャーとしての手作りの「内食」、たとえこれが週一回だけだとしても、この食卓の持つ価値は大きいといえる。
時間消費レジャーとしての「内食」
食材を買い(キャベツ、ギョウザ用のひき肉、ギョウザの皮)、あんを作り、皮に包んでいき、焼き上げる。これは簡便、時短とは無縁の、時間消費型のレジャーといえる。手作りギョウザという選択が、皮から包むというプロセスが、逆にレジャー価値を高めているといえる。
家族がいる、たとえば主婦の手作りギョウザであれば、大量に作られて冷凍され、時間のない時のお助けメニューとして何度も登場してくるものなのである。ちゃんと手作りをした上で、時短にもかなっているというのが主婦としての価値なのに対して、彼の作るギョウザは違うのだ。この日の夜の1回だけの食べきりメニューとなっている。
この日の朝食は「鮭、ごはん、目玉焼き、みそ汁」という具合に、ルーティンの朝食とは少し趣が変わっている。手の込んだ手作りというほどではないけれど、ここでも食をレジャーとして価値づけている雰囲気がありそうだ。
10連休GWの食の予兆
別の見方をすれば、この三連休の暮らしの中に、彼女という存在はない。これも極めて現代的な暮らしぶりの1つのパターンだともいえる。労働時間を短縮し休日を増やし(所得はむしろ下がる)ていくという社会の流れの中で、休日の食がレジャー化していくという価値は増大していく予感もする。その兆しを見せてくれている手作りギョウザということがいえそうだ。
因みに平日の昼食は18日の火曜日から列挙すると会社(社食)で食べている、「緑のたぬき」、「どん兵衛」、「カップ焼きそば」、「生姜焼き丼」であった。「中食」のレベルを通りこしてしまっている簡便さである。さて、2019年のゴールデンウイークは10連休になるということだが、手作りギョウザに象徴される、手作り「内食」というレジャーはどんな姿を見せるのだろうか。
(辻中俊樹 マーケティングプロディーサー)