【続『マーケティングの嘘』】―天気予報というビッグデータをとらえる①―

<暮らし気象台>というプロジェクト

天気予報や天気情報というものは、恐らく最大のビッグデータの1つである。
このデータや情報をマーケティングにどのようにして活かしていけばいいのか
加えて食のトレンドを分析、予測していくのにどう活用すればいいのか。

たとえばPOSデータなどとのマッチングを通して、商品動向とお天気情報を重ね合わせるのもその1つである。
ただ、ビッグデータとビッグデータとの統合分析には生活の実態とのズレがあまりにも多いことがある。
いわゆる「マーケティングの嘘」を重ねていくことになってしまう。

私たちは暮らしに多くの影響を与えているはずの、お天気や気象、あるいは電車や部屋の温度などを含めた
いわゆる環世界の情報を生活者の実感と行動に沿ってとらえていくことができないかと考えてきた。
これが暮らし気象台というプロジェクトの活動である。

この暮らし気象台というプロジェクトを始めるにあたって考えてきたことが
以下の「お天気インサイトのすすめ」というものだ。まずはこれを紹介しておく。


◆お天気に定型はなくなっている
猛暑に大雨、洪水、毎週のようにくる台風、地震…。めまぐるしく変化する自然気象環境。
2018年は想定外だらけだと割り切る訳にはいかない。
去年は夏が8⽉頭には終わりをつげた・・・・・・・⻑期視点でみれば習慣的な感覚にならされて想定外と思いこんでいるだけ。
実はそんな「定型」は崩れ去っていて、お天気に定型はなくなっている。
おまけにエリアによってこの差は歴然としている。都内の⼀部でゲリラ雷雨があったかと思うと、こちらでは⻘空が…。

◆ 生活の感覚は、お天気によって左右される
天気が変化すれば、実際の生活⾏動にも阻害が多発する。
生活を動かしている⾏動のスイッチや、その⼿前の気持ちのスイッチは、常にお天気がオンオフさせているといえる。
つまり、暮らしや消費⾏動の変化には、このお天気がこれまで以上に大前提になっているのだ。

◆猛暑⇒「塩分チャージ」&「氷菓」「⻨茶」が売れる? 程度のことではなさそう・・・
生態気象学の専門家である常盤勝美さんといろいろ議論していても
まだまだ生活者と気象の関連性についてはちゃんとデータ利⽤もされていない
( 2018年8⽉号「宣伝会議」のウェザーマーケティング特集でもそうした指摘をされていた)
外部環境としての<お天気>の変化もさることながら
実は、身近な生活環境が大きく変化していることに気付いていないことも多いのだ。

◆たとえば、電⾞もバスも猛暑であればあるほど寒いのだ。
カフェ空間もある⼈達にとっては寒い場所なのだ。
また、暖房がオンになっている空間は⾜が寒く、顔や肌やヘアはパリパリに乾燥で不快スイッチが⼊る。
ペットのいるお家では今年の猛暑でも、常時エアコンは25℃設定。⼈間たちはフリースを着て、夜寝る時には羽毛布団を使っている。
「暑い真夏だから冷えたそうめんを」などということは、⼀部の事実ではあるが、猛暑だからあったかスープということもある。

◆エリアの条件も想定以上に変化し「⼀⼈十色」となっている。
この「⼀⼈十色」が時間の流れで出現する背景には、自然とその反映である⼈⼯環境のあり⽅がある。
お天気が生みだす暮らしインサイトを深堀りしておく必要がありそうだ。
暮らし気象台、このプロジェクトはこんなお天気インサイトを構築していくためのトライである。


このプロジェクトは様々なトライアルを行っているが、その中の1つとして2018年11月15日にミニワークショップを実施した。
これは東京世田谷千歳船橋にある「ロカンダ世田谷」というカフェで月1回行われている
ロカンダ世田谷マーケティングサロン」の活動の一貫として行われたものである。
12月12日にもそのシリーズの第2回目が行われる。

11月15日に行われたマーケティングサロンの模様からエッセンスを次回から4回に分けてお届けしていく。
全体のテーマとタイトルは「エスノグラフィとビッグデータのコラボ―”ウェザーマーケティング4・0”とは?」ということで
生態気象学の専門家である常盤勝美さんのレクチャーが中心となっている。ご期待ください。

著者   マーケティング・プロデューサー  辻中俊樹