「食のトレンド」を捉えるために -ビッグデータと生活日記調査-

ビッグデータでわからないこと、わかること

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ビッグデータは切り口次第で大きな流れを捉えるために強力なツールとなる

ここ最近「食のトレンド」には、本当に多くのお問合せを頂いております。本音ベースでお話をさせていただくと、「食のトレンド」はビッグデータを、これまでに不可能だったあらゆる問題を解決してくれる魔法のデータだとは決して思っていません。扱い方次第では便利なのは確かですが、反面、むしろオタクのように細かく、どうでも良いような分析に没頭してしまうこともある扱いの難しいデータであるとも思っています。データを読み解くための視点と切り口が大切です。扱う範囲やユーザー層などによっても範囲が限られます。販売時点データや買い物データを分析される方にはよくおわかりかと思います。

例えばビッグデータで、真夏の暑い日にがそうめんが上昇するとします。同じ日に和風の煮物が上昇するとなれば、なんらかの関連性があると推測できます。さらに煮物は野菜が摂れるのが良いなどという多数のコメントがあれば気分までもある程度わかります。ひやむぎがここ数年で伸びてきたとなれば、来年もさらに関心が高まる可能性があることにも気づけます。

生活日記調査でしかわからない「食のトレンド」

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生活全体を俯瞰して捉える生活日記調査のフォーマット

しかしその先がなかなかわかりません。実はこれを探る方法として、ビッグデータと対照的な生活日記調査という手法があります。生活日記調査の手法については、またの機会に説明するとして…

この手法を使うと、例えばそうめんと煮物が組み合わさった理由として、「炭水化物だけだと野菜不足になるから煮物にした。」「暑い日でもさっぱりメニューで野菜をしっかり食べたい。」、「そうめんには野菜たっぷりの煮物で和食でまとめた。」など、さらに細部の消費者の意識が見えてきます。消費者の多くが、そうめんと一緒に食べるおかずを探していることはわかっていましたが、そうめんは炭水化物のため野菜不足になるという認識がその裏側にはあることまで見えてきます。
めんつゆに合わせると、おかずはやはり和惣菜になってくることもわかってきます。(トマトそうめんにはラタトゥイユということになるのでしょうか…現実的になかなかハードルは高そうです。)

民族誌学(エスノグラフィー)の手法で「食のトレンド」を捉える

これはほんの一例ですが、実はこの日記調査、ここまでのことを掴むまでに調査対象者は20〜30人で十分です。100人見ても200人見るのも結構ですが、むしろ分析が大変になるだけで、傾向を掴む場合にはさほど大差はないということがわかっています。生活日記調査はエスノグラフィーという文化人類学の民族誌学の手法と共通しています。より対照を俯瞰的に見る視点さえあれば、リサーチの対照が例え少人数であっても的確に食のトレンドを捉えることができるのです。

データ分析

「ビッグデータ × 生活日記調査」全く対照的な手法を合わせることにより、精度の高い「食のトレンド」分析・研究ができます。

膨大な数量のビッグデータと、少ない対象を深く分析する生活日記調査、両者は正反対に見えて実はとても相性が良いと私たちは実感しています。互いに補完しあうことでより正確な傾向が見えてくるのです。当サイトは「ビッグデータ×生活日記調査」の両方の専門家が分析した情報を掲載しています。

「食のトレンド」では、11月から食を中心にした生活全体にまで視点を広げ、「ビッグデータ×生活日記調査」による分析・研究から導き出した「食のトレンド」レポートを定期購読会員限定で無料配信させていただくことになりました。会員登録はこちらからどうぞ。

データだけがすべてじゃない!ユーザーとメーカーの温度差

「食のトレンド」に取り組んでいくなかで、いつも悩まされることがあります。

それが、ユーザーとメーカーの温度差です。

a0001_016860_m以前、ブームになっていた特定の調味料について当時「この調味料はどこまで伸びますか?」と複数の取引先から質問されました。答えは簡単で、まず、その素材を食べてみればよいのです。もちろん質問をされた担当者さんは皆さん食べていらっしゃいましたが、残念ながら「伸びると思う」と答えた方は一人もいらっしゃいませんでした。また、データで本来伸びるはずのタイミングに伸びない、実態調査でほとんど出現しないことで、一時的なブームになる可能性の高いことが早い段階でわかりました。案の定、このブームは失速してしまいましたが、正体がわからないままで商品開発に大規模な投資をしてはいけません。中にはブームに乗ろうと突っ走り、失敗したという話もいくつか聞きましたが…。

これが、ユーザーとメーカーの温度差です。

また、最近あるスーパーのバイヤーさんと売場担当者さんとの話に立ち会った際のことです。ある惣菜の味を変えるために、バイヤーさんが持ってきた業務用調味料を試食していました。メーカーが時代の健康志向に合わせ、試行錯誤で薄味・減塩でリニューアルしたのですが、その調味料を使った商品の購入者は、濃い味を好む肉体労働者やサラリーマン男性だということが売場担当者のなかで実感値としてはっきりしていたのです。残念ながらこの手の男性は、ショッパーとしては影が薄くポイントカードも持っていないためデータ化しにくくメーカーから見えないのです。

これも、ユーザーとメーカーの温度差です。

a0002_004836_m「健康志向の時代=薄味・減塩」という単純な話ではなく、むしろ夏場に塩分やカロリーを多く取らなければならない人たちがいます。一般論や偏ったデータだけでは、こたえるべきユーザーのニーズからずれてしまうことになります。

確かにデータや調査で大きなヒントや気づきを得ることは多々あります。一方で、データから見えないことも多々あります。多くの情報が手に入りやすい時代になった反面、どこに行ってもデータに基づいた企画提案が多くなりがちです。現場の声や消費者の声を聞き、データと融合することが大事だと改めて実感する出来事でした。食の見える化は奥が深いです!

ブームは一発屋、トレンドは実力派ともいえます。「食のトレンド」はブームでなくトレンドに重点を置いています。6月にじゃがいもが伸びるのは一目瞭然ですが、じゃがいもがいつ、どこで誰に、どんな食べられ方をしていて、なぜそれを食べたのか、今後どうなっていくのか、その全体像を把握することが大切です。日本人にとってじゃがいもといえば、おかずに使われる野菜や、フライドポテト…のような認識になっているのかもしれませんが、じゃがいもを主食(=日本人にとっての米)とする国も世界にはたくさんあるのです。

他社との差別化をはかり、ユーザーに商品を手に取ってもらえるよう、私どもの「食のトレンド」から新発見をご提案します。まずは食の全体像を俯瞰することが、最も大切だと私たちは考えています。